アース用コモンフィルタの製作

                                                                               JA6HR 田邊

コモンモードの高周波電流は、その源が「アンテナからの電波」で発生して、最終的には地面(アース)にむかって、いろいろな経路で伝わり、流れ込んでいきます。
非常に優秀なアースが取れている場合には、無線機やアースの「コモンモード電流」をバイパスすることが可能です。
しかし、実際にはアースの接地抵抗が大きかったり、アース線が長かったりして、高周波的に理想のアースを設定することが、非常に難しいのが現状です。
むしろ、アース地点から無線機までの引っ込みが、広帯域のアンテナとして作用し、そこから電波を輻射することがあります。


 設置したアースを効果的に利用するために、「高周波的なバイパス」としての役割を果たすために、『アース用コモン・フィルタ』を無線機のアース端子とアース線間に入れます。(図2@参照)

このアース用コモンフィルタは、IN/OUTの極性はありません。また、HFからVHFまで広帯域に作用します。

図2Aは、「電源用コモンフィルタ」、Bは、「アンテナコモンフィルタ」を示します。

フィルタの作成
用意する物
@ トロイダル・コア  FT−80 #43#41       計2個
A エナメル 1.2mm                          1.5

B  ケーブルタイ                                          2本

トロイダルコアの半分に、エナメル線を12回から14回巻きます。(図1)

これでフィルタはできます。小さなプラスティックケースに収めますと、FBです。
この、1段巻きで、約80〜100μHのインダクタンスが得られます。


実験結果では1段では減衰度約−25bdが得られ、2段にしますと約−35db〜−40db程度得られました。
周波数特性も1MHz〜30MHzまでフラットですが、1段では、3MHz以下の特性が悪くなります。
したがって、トライダルコアを#43と#41を使い2段に巻くことをお勧めします。

エナメル線をコアに巻くとき、コアの角でエナメルが剥奪されないように注意して巻きます。
電流容量は15A〜20A程度までとれます。テフロン線を使った場合の逆耐圧電圧はピークで約2,000Vまで耐えられます

コモンフィルタは、巻き線を裸で無線機に接続するより、プラスティック・ケースに入れて使用する方がより安全です。
プラスティックケースの加工は、ケースの両端に3mmの穴を開け、ビスを付けてコアを固定し、外側はリード線で無線機とアース線にそれぞれ接続します。
無線機アース端子への取付は、この間のリード線は極力短くするようにして下さい。

 
 他の「アンテナコモン・フィルター」や、「電源コモンフィルター」も、線材が違うだけで製作方法や原理は同じです。


1999.5.1  JA6HR