巷説

アンテナ調整の勘どころ

 

1.     はじめに

アマチュア無線局のアンテナは「自作」であろうと「メーカー」製であろうと、使用者自身(ユーザー)が組立・調整をしなければなりません。

このアンテナの調整次第で効率の良いアンテナになるか、飛びの悪いアンテナになるか、その性能が大きく左右されますからとても大切です。

効率の良いアンテナに仕上げるためには、一定の正しい知識を持って調整することがとても大切になります。

 

アンテナ調整の一定の知識とは、「アンテナの動作についての知識」、「電波の伝わり方の知識」そして、調整のための「測定器の知識」が必要になります。

それと同時に、「アンテナ調整の要件」を掴んでいないと、効率の良い調整はできません。

「調整の要件」を列記しますと、

@     調整の目的は。

A     どのようなアンテナを調整するか。(アンテナの種類)

B     アンテナ調整のタイミングは。

C     調整の部分は。

D     調整の方法は。

E     どんな測定器を使うか。

F     設置場所の環境は。

G     その他。         等々、多くの要件があります。

 

本文は、『 「巷説」 アンテナ調整の勘どころ』としました。

これは、アンテナ調整の「学説」ではなく「世間のとりざた」的なものとして軽く受け流して下さい。「学説」そのものは、皆様自身が専門書で身につけていただくことを切望します。

ここでは、「アンテナ調整の手順」、「調整の要点」、「測定器」について説明してゆきたいと思います。あくまでも、これは一つの考え方として理解して下さい。

私達HAMは、限られた測定器しかありませんので、最低必要な測定器を使うという条件で説明して行きます。

よくQSOの話題の中で、『SWRが、1.2以下だから調整はバッチリだ』と、調整が万全と考えている人がいます。そうでしょうか?  

よく聞いてみますとSWRの測定場所は、トランシーバーの前で、しかも、もう5年も6年も使った同軸ケーブルを使っているということです。

皆さんは、どう思いますか?

 

 

2.     調整の基本手順

まず最初に、アンテナの調整の手順についてお話しします。

「メーカー製」の場合ですと、メーカーの指定した寸法、組立マニュアルの添って作り、組立後同軸ケーブルを継いで所定の場所に上げてからSWRを測定し、「SWRが1.5以下」であればOKというケースが多いのではないでしょうか。

 

しかし、「SWRが2.0」以上あったときはどうするのでしょうか。また、アンテナを降ろして各部をチェックするのでしょうか。

これでは、時間的にも労力的にも大きなロスになります。

 

アンテナの調整は、電波の放射される順番に、各部をそれぞれチェックし、調整して最後に総合的な調整をすれば、簡単ですし、問題点が発生したとき自分自身に整理が出来ますので、対応が簡単です。

 


調整の手順を下に図解しましたのでご覧下さい。この手順で以後説明をすすめて行きます。

 

3.     送信機の出力測定

  アンテナ調整で、まず行う測定は送信機系統の出力の測定です。

これは、電力(電波)を送り出す側がキチンとしているかの確認です。

総合調整の測定時に、SWR値やフィーダの損失を算出するとき、送り出す側のデータが曖昧では、正しい調整ができません。

この項の調整は、事前にして置くこともできます。

 

送信機の出力を測定する方法。

      必要な測定器    a)終端型電力計(50Ωダミーロード内蔵)

                   b)通過型電力(SWR)計 50Ωダミーロード

   


a)終端型電力使用の測定例

       


    b)通過型電力計使用の測定例

        ここでは、送信機(TX)の出力の正確な電力値を測定します。

送信機の出力インピーダンスは50Ω、アンテナも50Ω、同軸ケーブルも50Ωのインピーダンスとして設定していきます。

電力計やダミーロードへ接続の同軸ケーブルは最短であることが必要です。

 

送信機にBPF(バンドパスフィルタ)やアンテナカップラー等を付けている場合は、それぞれの挿入損失を測定します。

図1又は図2で測定した電力(W)と、図1の終端型電力計の手前にフィルタやアンテナカップラーなどを挿入した電力(W)を測定します。

図2の場合は、送信機(TX)→SWR計→フィルタ,カップラー→ダミーロードの順に接続して測定します。

   

上記の方法で求めた2つの電力から   [W]−[W]=[Wloss  のようにフィルター等の「挿入損失電力」を求めることができます。

 

一般的に挿入損失は1ヶ当たり –0.5db 程度で2ヶ挿入だと 最大 –1.5db程度となり、18% 〜30%の減衰による損失が発生します。

これは、送信機側で10wの電力が、フィルターを通ると8w〜7w程度の出力しか得られないことになります。

 

 

4.     フィーダーの調整

フィーダーの長さの決め方があるのでしょうか?

よくQSOの会話で、「同軸ケーブルは、50Ωなので長さに関係なくインピーダンス50Ωだ。」といっているのを耳にします。

しかし、同軸ケーブルやフィーダーには「電波」が流れます。「電波」=高周波電流が流れるますと、その周波数の波長(λ)により電流の節と腹が検知できます。これが「定在波」です。 

この電流の節と腹の部分では「インピーダンス」値が異なります。

 

電流の節(電流最小値)のインピーダンスは大きく、電流の腹(電流最大値)ではインピーダンスは少なくなります。半波長(λ/2)の両端は同じインピーダンスになります。

 

フィーダーの調整で考慮しなければならないことがもう一つあります。これがフィーダーの長さを決める「長さの基準」です。

私達が「波長」を計算するときは、使用する材質などを全く配慮しない計算式を使います。

これが、「物理的波長」(物理長)です。

 

例えば、「145.0MHzの物理長」は、   λ=300/f(MHz) 300 145.0 2.069m

になります。

しかし、ある物体を流れる電流に対して、その材質などでその流れを阻害する働きが生じます。これが、「速度係数」とか「短縮率」と云われるものです。

「物理長」x「短縮率」=「電気長」になります。

 

「電気的波長」(電気長)は、フィーダーやアンテナ・エレメントの持つ「速度係数(短縮率)」を乗じた値となります。つまり、「実際に高周波がその物体に流れる状態の波長」を「電気長」といいます。

式は,  λ =  300 145)*(短縮率)  となります。

   

同軸ケーブルの速度係数(短縮率)は、その線経の太さと材質により異なります。また、網線の形状等でも異なります。

実際に同軸ケーブルやフィーダー類の長さを決めるときには、「電気的波長」を基準にして、その「使用周波数の半波長の整数倍」の長さで決めます。

          


余談になりますが、同軸ケーブルのインピーダンスの測定方法を2〜3説明しておきます。暇のときに測定してみて下さい。

  

@ フィーダーのインピーダンス測定(DM使用例)

図3は、インピーダンスが不明のフィーダーを測定する方法で、フィーダーと同じと思われるインピーダンスのダミーロードを接続し、フィーダーのもう一端にpick-up コイルをつけて「ティップメータ(DM)」の周波数を変えてみます。

   DMの周波数に関係なく、ディップ点が無い場合は、Z=Z が一致します。

 

A     SWRアナライザー又は、RFインピーダンスメータ使用

SWRアナライザー(MFJ259)には、インピーダンス計がついているので、任意長のフィーダーを直読できるので便利です。

インピーダンス計のついていないものは、図4のようにして測定します。

 

ここで「ZM」はインピーダンス計を指します。

 


      

B     SWR計を使用の場合

通過型のSWR計はほとんどの方が1台は持っていると思います。

これを使用して測る場合は、使用周波数と同じ高周波源(高周波発信器又は、SWRアナライザー)の出力側に通過型SWR計をつけて、任意長のフィーダーの先に50Ω又は、75Ωのダミーロードを付けます。


SWR値が最少となる方のダミーロードの値が、そのフィーダーのインピーダンスです。                               

 

以上、3通りの代表的な測定法を紹介しましたが、このほかにも4〜5通りの測定法がありますが、

現在は、同軸ケーブルのインピーダンスはすでに解かりますから、あまり神経質になる必要はありません。

測定器も、前述の「インピーダンス計付きSWRアナライザー」が市販され、所持している方がいますので測定していただくこともできます。

    前記の中で測定精度の高いのは、2)インピーダンス計での直読方式です。

 

 

5.適正フィーダーの調整

 同軸ケーブルは、アンテナと無線機を繋ぎ送信機からの高周波電流(電波)をアンテ

  ナに送り込む「電導線」です。

 

私達は、「給電線」(同軸ケーブル)をアンテナの一部であり「電波を輻射することを理解して置く必要があります。

同軸ケーブルを適正な長さにして、途中の損失を少なくし、アンテナからの電波の効率を上げるようにしなければなりません。

 

@同軸ケーブル内の定在波

同軸ケーブルは各種有り、それぞれに固有の規格と短縮率があります。ここでは私達が日頃使っている、5D2V,8D2V,10D2V、5DFB、8DFB、10DFBなど「D(50Ω)系」を対象に説明します。

  これらの同軸ケーブルのインピーダンスはいずれも50Ωです。

これは、高周波(電波)を同軸に流しても、どこでも50Ωのインピーダンスが確保されると云う意味ではありません。

 

高周波は、一つの導体の中を流れるとき、その波長の位置により電圧の高いところと低いところが生じます。

この電圧の高いところが定在波のある位置になり、この部分をアンテナからの給電部にしますと、インピーダンス(Zo)は大きくなり反射波が発生します。  これが「定在波」です。

 

図8の「フィーダー上の電圧」軸の、「λ/2」,「 λ」,のところが電圧が低くなります。

いわゆる「電圧の節=電流の腹」になります。

この部分のインピーダンスが低くなるところです。

アンテナ出力50Ωのトランシーバーでは、この位置が約50Ωになる同軸ケーブルで給電します。

同軸ケーブルを切り出すときに、この「電圧の節」から「電圧の節」が両端になるように切ると反射波が少なく、ロスが少ない「給電線」になります。

 

A同軸ケーブルの短縮率の測定

高周波電流は、導体を流れるときにその表皮を流れます。

同軸ケーブルの構造は、芯線の回りに発泡スチロールのような絶縁物を置き、外皮網線でもう一つの導体を造りだしています。

この絶縁体の材質と外皮線対芯線の直径から、この同軸ケーブルを流れる高周波の速度係数(短縮率)が決まります。

同じ規格の同軸ケーブルでも、絶縁物の材質や網線の本数などで微妙に違いがあります。

その同軸ケーブルの正確な短縮率を求める測定法は、次のように方法があります。

 

使用予定の同軸ケーブルの一部を、測定周波数の λ/4 又は、λ/2 の長さに切り出します。

使用周波数の波長(λ)は、次式から求められます。

    波長λ(m) 300/f(MHz)     

      

  同軸の短縮率を測定する場合は、周波数があまり高いと誤差が大きくなり測定が難しくなり、低いと測定片を沢山使います。

例えば、測定片を50.1MHzのλ/4 145.0MHzのλ/4を作りますと、

   7551.0 1.4706(m)  と、75145.0 0.517(m)

2本併せて約2m ですから、この程度の同軸の損失は、私達「無銭家」でも大きな負担にはなりません。

 

具体的に「同軸の短縮率」の測定は、右図のように測る方法があります。

測定同軸の長さを「L」とします。

測定片が L=「λ/4」のときは、先端を

@「解放」にして、L=「λ/2」のときは先端をA「ショート」させます。(図7参照)

もう一つの測定端には「ワンターン・コイル」をハンダ付けします。

 

  測定器は、「グリッド・ディップメーター」か、「SWRアナライザー」を使います。

測定方法は図を参考にして下さい。測定器の測定端子には、「ワンターン・コイル」を

M型コネクタに付けてピックアップコイルとします。

測定準備が出来ましたら、測定する同軸ケーブルをまっすぐに伸ばし、椅子や机の角に置きます。

  この場合、出来るだけ金属製のものは避けた方が誤差が少なくなります。

  測定片のコイルに測定器を近づけ、共振周波数を測ります。

50.1MHzの測定片の共振周波数(一番ディップする点)の周波数を読みます。

  例えば、33.685MHz を指示したとしますと、

          33.685850.1 0.66  となり、 短縮は、0.66になります。

同じように、他の測定片も測ります。測定片によって多少短縮率は違います。

これは測定片の切り出しの誤差や、測定器の誤差があるからです。そのために、2波以上で測定することをお勧めします。

  測定結果は、波長の長い方の値を使う方が誤差が少し少ないと思います。

また、同じ型番の同軸ケーブルでも、メーカーが違えば微妙に違いますし、新品でも年数が立っていると絶縁の発泡スチロール等の劣化による変化があります。

 

同軸ケーブルの短縮率測定の方法でもう一つの方法は、「SWRアナライザー」を使う  方法です。

これは、測定片を正確に150cmに切り出し、片方にコネクタを付けてアナライザーにつなぎます。もう一方は、「解放」にします。

この測定片を「SWRアナライザー」のインピーダンスが最小になる周波数を読みとります。

次に、測定片を50cm解放端を切り落とします。100cmの測定片になっています。

この共振周波数を同様に測定します。

短縮率は、

         150cmのときの周波数]/[100cmのときの周波数]=[短縮率]

  で求めることができます。

 

  B適正同軸の切り出し

同軸の切り出しは前述しましたように、「定在波の無い」ところで切り出さないといけ

ません。

  一般的に、λ=300/f  から得られる数値は、「物理的波長」です。

実際に同軸ケーブルやアンテナに流れる電流の波長は、それぞれの導体の「速度係数」(短縮率)を乗じます。この値の波長を「電気的波長」とか「実質的波長」といっていま

す。

 

  同軸ケーブルの切り出しは、「電気的波長」で行います。

  例えば、使用周波数21MHz帯のとき、主にフォーンバンドであれば、21.250MHz

  を中心周波数とします。

  これから、計算により実際に使用する長さを求めます。

  計算式は次の通りです。

        [物理的半波長(m)]= 150/f(MHz)

        [電気的半波長(m)]= ([物理的半波長(m)x [短縮率])

実際には、 

       15021.250 7.0588    7.0588 x 0.66 4.659(m)

になります。 これが、電気的半波長です。

  次に、アンテナから無線機までの引き込みに必要な長さを実測します。

例えば18m程度必要としますと、先程の「電気的半波長」の整数倍の近似値を求めま

す。     例題から、  4.659x 4)= 18.64(m) になります。

同軸ケーブルは、18.64m で切り出しますと良いことになります。

ここで、注意していただきたいのは、必要な長さが、整数倍より長いときは、一つ大きい「倍数」を使います。また、「λ/8」以下の誤差は許容しても構いません。

このようにしてケーブルの実長を求めますが、短縮率を測定しなかったときは、アンテナハンドブックやメーカーの規格表の数値を使って下さい。

また、端数は、丸めて構いません。

 

多バンド(3バンドなど)のときは、使用周波数のうち最も周波数の高いもので算出します。2つのバンドを計算し、整数倍は最大公約数で求めます。

しかし、どれかの周波数が犠牲になります。これは、仕方がありませんが、この場合でも(例えば、7/21/28MHz)21MHzと28MHzで計測し、自分の主に使うバンドを最優先すると良いでしょう。

 

 

6.エレメントの調整

 

既製のアンテナは、「無調整型」が多く細かい調整はありませんが、最終的な「確認」は必要です。自作のアンテナや、多バンド型のアンテナでは調整が必要になります。

 

アンテナも大別して「YAGIアンテナ」や「ダイポールアンテナ」、「接地型アンテナ」のような「単一共振型」の外に、「HB9CV」や「ZLスペシャルアンテナ」のような、「寄生共振型」、パラポラアンテナのような「電界型」のように種類が分かれます。

それぞれ原理が違いますから調整方法も異なります。

ここでは、最も一般的な「単一共振型」の調整法を説明します。

 

   

1)         エレメント長の調整

基本的な「共振」の測定は、エレメントの給電部に1〜2ターンのリンクコイルをつけて、これにディップメータを結合して周波数を測ります。SWRアナライザーでも同じ要領で測定できます。

このときのエレメントの長さは、電気長になります。

従って、エレメントの材質、太さなどで速度係数が異なりますから、物理長で求めたエレメントの実周波数は、低く表示されます。

 

また、ディップメータで基本周波数(f0)のほかに、整数倍の周波数(高調波、低調波)が検出されます。

 

測定位置は、エレメントの給電部といいましたが、最も測定しやすく、給電しやすい場所は、エレメントの電流腹部(高周波電流の最も大きい場所)です。                   

この部分にコイル結合(誘導結合)をします。

 

図9の電圧腹部(エレメント左端)での結合は、容量結合で測定しますが「C端子付のディップメータ」でないと測定できません。

C結合は、感度が悪く測定が難しいので、一般的には誘導(M)結合を使います。

実際には、リンクコイルとの結合の度合いで、実共振周波数より低めに測定されます。

 

応用例としては、1/4λ接地型(モービルホイップ)の場合、設置点付近に電流の腹部があります。

SWRアナライザを使う場合は、アナライザのアンテナ端子にそのままホイップを取り付けてはかれますので、リンクコイルが省略できます。

 

接地型の場合は、給電点と接地までのリード長もエレメント長に加算されるので、できるだけ短くした方が良いようです。

HF用の多バンド接地アンテナでは、地表から約30cm程度の位置が調整しやすいようです。

 

ダイポール・アンテナの調整は、基本的なエレメントの測定方法と似ていますので、省略します。

 

 

 

 2)YAGI系アンテナの調整

YAGI系では、輻射エレメントの中央部(給電部)にリンクコイルをつけて、誘導結合して測ります。

SWRアナライザ使用では、給電部にM接栓をつけて、それを直接アナライザのアンテナ接栓に接続して測ります。

この場合、給電部のリード線はできるだけ短い方が良いようです。

 

クランクアップタワー上での測定は、共振周波数が高い方にシフトしますので、測定値より0.5〜1.5%程度低めにセットすると良いようです。

 

 

3)      マルチバンド系の調整

マルチバンドの調整は、周波数の高い方から調整していきます。


マルチバンドのグランドプレーン型では、エレメントと同時に、ラジアルも順次調整します。

 

その他は、他のアンテナと同じ要領での調整になります。

図11は、マルチダイポールアンテナの測定図で、周波数の高い方から測ります。

図12は、マルチGPアンテナの測定方法です。これも、周波数の高い方から測ります。

 

4)      エレメントのインピーダンスの測定

インピーダンスの直読:

MFJ−259というインピーダンス計内蔵のSWRアナライザをお持ちの方は、アンテナの給電部にM型接栓をつけて、アナライザのアンテナ端子に直接結合し、指定の周波数を計測しながら、エレメントのインピーダンスを直読できます。

 

ノイズブリッジと受信機を使う場合:

受信機を高周波電源(RF電源)として使用し、ノイズブリッジを使って一番ノイズの多いところを読み、「R」と「X」ダイヤルからインピーダンスを計測します。

ノイズブリッジの代わりに自作のブリッジでも測定できます。

MFJ−249のようにインピーダンス計のないアナライザには、インピーダンス計を繋いで測定することができます。

アマチュア無線でよく使用されるインピーダンス計は、50Ωを基準にしたブリッジ型のものが多く、これよりも大きく外れますと誤差が大きくなってきます。

 

マッチング(整合)回路の調整では、ブリッジのダイヤルを50Ω等希望するインピーダンスにセットして、ブリッジの零バランスが最少になるように整合回路を調整します。

アンテナ整合部のインピーダンスは、「35Ω〜75Ω」の範囲にあることが望まれます。

 

その他、SWR計のみでの測定方法もありますが、同軸ケーブルを繋いでいますので精度が落ちます。また、整合部のインピーダンスが測定できません。

SWR計は、「進行波と反射波の比較」を測定するものですから、SWRアナライザーとは機能が違います。

SWRアナライザーは、「主にインピーダンスからSWRを判断する機械です。

その違いを理解して正しい測定をして下さい。

                         

写真は、私のMFJ−249(右)にはインピーダンス計がありませんので、自作のインピーダンス計(左)を接続して使用しています。

 

 

 

5)      アンテナ系の総合調整

アンテナ調整は、以上のように @送信機側アンテナターミナル  Aアンテナカプラー等付属機器周辺  Bフィーダー等給電線  Cアンテナエレメント  Dアンテナ給電点の調整が必要です。

 

最初に、それぞれを単独で調整し、最後に実際に取り付けて最終調整をします。

最終調整では、BからDまでを取り付けてフィダーの接栓にSWRアナライザを接続しSWRを測定します。

SWRが1.01.3の範囲ですとOKです。

SWR1.3を越えているともう一度、アンテナエレメント給電部の調整をしてください。

測定したときの高さと、実際の高さの違いによる誤差が生じたものと思われます。

殆どの場合は、1.3以下で収まります。

仮に、SWR1.5でもその損失は4ですから、あまり気にすることはありません。

 

アンテナの調整で、大切なのが「アンテナ給電部の調整」(インピーダンスマッチング)と、「フィーダーの長さ」ではないでしょうか。

電波が輻射されるのは、エレメントだけでなくフィーダーやアース線からさえも輻射されます。

これらの輻射が別の周波数の発生を創りだし、電波障害の原因になったり、効率の悪い(利得の低い)アンテナになったりします。

また、アンテナ調整の不備で寄生振動を起こし送信機の終段のトランジスタを破壊したり、汚い電波を発射することにもなります。

アンテナ調整をキチンとして、綺麗な電波で安心して交信を楽しみましょう。

 

 

7.SWRアナライザー(測定器)

 

    アンテナの測定器の一つに、小型で手軽な「SWRアナライザー」があります。

    名称は「SWRアナライザー」(MFJ社)とか、「スタンディング・ウエーブアナラ

    イザー」(クラニシ)、「アンテナアナライザー」(デリカ)など違いますが内容はいず

    れも「RFアナライザー」です。

    一般的に広く使われているのは、前者の2種です。デリカのアナライザーは機能が豊

   富で、インピーダンス成分が直読できるメリットがありますが、他2社に比べ高価で す。

 

 

この、「RFアナライザー」(以後アナライザーとも云います)は、アンテナのSWR

を測定する機械ですが、その原理は「SWR計」と大きな違いがあります。

「SWR計」は、アンテナの給電点と給電線のインピーダン不整合のために反射され

て戻ってくる電波と、元々送り出した電波との比率を測りその量を表示する装置です。

  「SWRアナライザー」は、その内部にブリッジを用意し、ブリッジの一辺にアンテ

ナの給電線を接続した状態で、ブリッジの平衡状態をSWRの値に置き換えて測定し

ます。

 

この2つの違いは、SWR計は「アンテナから返ってきた電波の測定」であり、SW

Rアナライザーは、「アンテナ給電部のインピーダンスの測定」をするという違いが

あります。

また、SWRアナライザーはSWR計にない特徴を持っています。それは、発信器と

周波数カウンターを内蔵していますから野外でも、アンテナ直下でも簡単にSWRの

測定ができます。

SWRアナライザーから発信される電波は極めて微少ですから、電波法施行規則第6

条1−3項でいう免許を要しない小型発信器に該当しますから、誰でも簡単に使うこ

とができます。

 

 1)SWRアナライザーの基本操作

 

@    アンテナのSWR測定

既にこれを使って測定された方は多いと思いますが、SWRの測定は非常に簡単です。

     アンテナ給電点のSWR測定は図1のように、アンテナ給電点とSWRアナライザーを接続して、測定周波数にあわせ、SWR値を読みとるだけです。

    周波数を変化させてメーター(SWR)が最小にになるところを探せば、直ちに最小SWR値の周波数が直読できます。

 

    例えば、21MHzのダイポール・アンテナを測定する場合ですと、目的の中心周波数21.250MHz前後のメーター最小点の周波数を読みます。

    このSWR最小点の周波数が、「アンテナの共振周波数」になります。

    この場合、目的周波数より低いところに最小点がある場合は、エレメントを短めにしますし、高い点にあればエレメントを長くします。こうして、目的の周波数でのSWRが最小になるようにエレメントを調整していきます。

 

    実際のアンテナの測定では、最初は地上3m位のところで、あらかじめ測定しておき、その後目的の場所まであげてから再度測定します。

    所定の場所にあげてからの測定は、アンテナ直下で測るのが難しい場合は実際使用する同軸ケーブルを接続して測定します。

       こうして、トランシーバーを使わずにアンテナのSWRを測定することができます。

 

   SWR測定に関しての注意事項

    A.測定時に周囲の影響に注意します。例えば、地上高3mの時と、8mとか10

mに上げたときとでは、同じエレメント長でも共振周波数が違います。

この状態から、アンテナが周囲の影響を受けているとが理解できるでしょう。

一般的に測定時に必要な距離はλ/4(21MHzでは約3.5m)位は必要と言われています。

B.被測定アンテナが接地型の場合は、アースを確実にとるような注意が必要です

。YAGIアンテナやダイポールなどは、SWRアナライザーを手でもって測定しますが、GPや、R6などのような接地型では、SWRアナライザーを接地し筐体を手に持たないよう配慮します。

 

 Aインピーダンスの測定

HF帯用のアナライザーでは、アンテナ・インピーダンスの測定もできます。

ただ、このインピーダンスは虚数分を含んだ「絶対数」です。そのために、インピーダンスが50Ω表示でSWRが必ずしも「1.0」とはなりません。

しかし、アンテナの共振点では虚数分が「0Ω」ですから、共振点のインピーダンス測定は問題ありません。

アンテナ直下での共振時のインピーダンスもSWR同様に最小になるように測定されます。

 

アンテナの調整法は、

A.まず、インピーダンスが一番低くなる「共振周波数」を探します。

B.そのときのインピーダンスを確認します。

インピーダンスが50Ωに近ければ問題ありませんが、50Ωにほど遠いようでしたら検討が必要です。

インピーダンスが、33Ω以下、または、75Ω以上ある場合は、エレメント長をいくら調整してもSWRは、「1.5」以下に落とすことが困難になります。

この場合は、マッチングセクションや、アンテナの張り方、エレメントの左右のミスマッチなどをもう一度検討する必要があります。

    C.これらが終わった後に、はじめて、エレメントの長さを調整し共振点を目的の

周波数に合わせます。

D.ここでまた、インピーダンスがずれるかもしれませんが、これは微調整で終わります。

 

アンテナの調整をするときに、いきなりSWRだけを下げるために、エレメント長を扱い、その後にアンテナの張り方を変えたり、設置場所や高さを変えると大変な手間になります。

HF帯のアンテナの調整は、SWRアナライザーのインピーダンス計をフル活用することです。 インピーダンス測定から始めましょう

 

 

SWRアナライザーの応用

    SWRアナライザーは、SWRとインピーダンスだけでなく、「周波数カウンター」

や「発信器」んどを備えており、これらを追うyぷすればいろいろなものが測定で

きる便利グッズです。  機会があれば是非試して下さい。

 

1.小型発信器の応用

  SWRアナライザーの原理は、測定端子の一端がブリッジ回路を構成しています。

    そして、この内部に小さな発信器を持ち、ここから信号を取り出すことが可能

    です。一般の発信器のように信号レベルは変えることができませんが、「広帯域の信

    号源」になります。

    また、周波数カウンターで周波数が表示されますので、市販のアナログ発信器

    よりも正確です。

    そのために、フィルター特性や受信回路の測定に利用できます。

    発信周波数の安定までには、20〜30分程度かかりますので、電池は消耗し

    ます。付属のACアダプターを使うと良いでしょう。

 

2.           周波数カウンターの応用

    MFJ−249/259は内部の周波数カウンターが単独で動作します。

    JJYなどの標準信号を使いその測定精度を上げることができます。

    受信機のダイヤル周波数の校正や、周波数の比較などに使えます。

    自作受信機の不明周波数の確認にも使えます。

 

3.           同軸ケーブルの電気長の測定

    同軸ケーブルはその構造上から、芯線の大きさや外被線との間の絶縁材などの違いで

    、高周波(電波)が同軸を流れるときに波長の長さが計算上より短くなります。

    この実際長(物理長)との差が俗にいう、「同軸ケーブルの短縮率」です。

    同軸ケーブルを給電線として使うとき、電波がこれを流れるとき電波の電気的波長

    ごとに電圧の腹と節が生じます。この電圧の腹の部分に「定在波」ができます。

    同軸ケーブルを使用するために、アンテナから無線機までの長さをただ単に切り出

    すのでなく、無線機接続位置が使用周波数の波長の「電圧の腹」になる部分を選び

    ます。

    こうしますと、この部分のインピーダンスが低く50Ωに近い部分になるからです。

 

    測定方法は、前述の「4.フィーダーの調整」を参照下さい。

 

4.               同軸ケーブルの良否測定

    同軸ケーブル芯線や、外被線の導通を測るのでしたら「テスター」で導通試験を

    することで十分ですが、同軸ケーブルがちゃんと高周波線路として動作してい

    ることを確認するには、実際に高周波を流し測定しなければなりません。

 

    測定方法は、測定する同軸ケーブルの片方に100Ωの抵抗を付けます。

    そしてもう一つの端をSWRアナライザーに接続します。

    同軸ケーブルにロスがなければ、アナライザーのSWRは、「2」を示します。

    これが、SWR「1」に近づけば「ロスが多い」ことを示し、SWR「2」を

    越えれば同軸ケーブルの芯線断などが考えられます。

    ここで使う抵抗100Ωは、高周波特性の良いものがFBです。また測定する同

    軸ケーブルは任意長のものでかまいませんが、より厳密に測定をと考えるなら

    λ/2(電気長)の整数倍の長さで測定して下さい。

    この理論的な数式は、

        SWR= Zo:Zr    から求められます。

Zo=同軸ケーブルの固有インピーダンス

Zr=端末抵抗(100Ω)

 

5.           フィルター特性の測定

    コイルとコンデンサーの組み合わせでできた、フィルターの特性を測定することが

    できます。

    このようなLPF(ローパスフィルター)は、その構造から回路に電力を消耗する部

    分がありません。このためにフィルターの「通過帯域」は、50Ωの同軸ケーブル

    と同じ作用をし、「阻止帯域」では入ってきた電波のエネルギーをはね返します。

 

    このようなことから反射の量(リターンロス)がわかれば大まかな特性もわかります。

    クラニシの「BR−400」は、反射量が直読できます。他のアナライザーはSWR

    から換算する方法で測定します。

    ただ、この測定方法はあくまでも反射量を測定していますので、「阻止帯域」につ

    いては、ほとんど定量的測定はできません。逆に「通過帯域」のロスを測定するに

    はとても便利です。

 

6.           グリッド・ディップメーターへの応用

    SWRアナライザーは、発振信号を測定端子に送り込みこの端子の状態を測定します。

    ディップメーターは、同調回路(共振回路)に測定端子を近づけてアナライザーの

    周波数を変化させて測定します。このとき、ある測定周波数で急にSWRメーターま

    たは、インピーダンスメーターがディップするところにでくわします。

    この、ディップの最も深い周波数が、被測定回路の固有周波数です。

 

    測定端子はアナライザーのM型コネクターに直径3cm位の2回巻きコイルを付け

    て検出用コイル(ピックアップ・コイル)にします。

    このピックアップコイルは、測定周波数により巻数と直径を変えます。

    この測定のときに、被測定回路にあまり密に結合して測りますと、正確な周波数が

    測定できませんので注意して下さい。

 

最後に

    アンテナの調整は、「各接合部のインピーダンスの整合」です。

    アンテナの給電点で、YAGIアンテナの場合は約25Ω程度、グランドプレーン

    アンテナで15〜20Ω、フォールデットダイポールでは、200Ω〜300Ωと

    まちまちです。

    これを、50Ωの給電線に整合させるので、アンテナマッチング回路が工夫されます。

    蛇足ですが、「アンテナ・バラン」は基本的にはマッチング回路ではありません。

    「不平衡を平衡に変換する一種のトランス」です。

    ただ、1:4とか、1:9というバランがありますが、これは200Ωを50Ωに

    、450Ωを50Ωに変換するトランスですから、ある意味のマッチング回路ですが、

    本質は変換トランスです。

   「バラン」の説明を、よく「バランはマッチング回路だ」と主張している人がいま

    すが、これは間違いです。

    これからは各測定器の特徴を理解し、正しい調整方法で、より素晴らしいアンテナ

    の調整を行い、DX通信を楽しんで下さい。

                                                                JA6HR